マッシブデータフロー(MDF)対談・第2回目の今回は、身体性認知科学を「認知行動療法」という枠組みで実践的に展開する、哲学者河本英夫さんをお招きし、心や意識を語るための方法論を探る議論をしたい。
これまで言語的な定義によりなされていた、質感の多様性やエピソード記憶、能動性と受動性の感覚、主観的な時間などを、恣意的なストーリーをくっつけて分かったとするのではなく、そこにMDFの持つ、システマティックで大規模な自己組織化と進化の表現を与えることはできないか。たとえばそこに身体性認知科学とMDFの接点が見出せないだろうか。
身体性の科学とは、身体の持つ物理的な制約をたとえばニューラル・ネットワークや、アルゴリズムに課すだけではない。認知が必要とする時間と空間の作り方にある。最近の脳のモデルに見失われがちなのは、そうした身体性がつくる時間と空間のことであり、MDFと身体性を融合することで、それが補完され、複雑さに裏打ちされた認知の正しい側面を見せることが期待される。第2回目のMDF対談では、これが論点である。
河本氏との出会い
河本さんと最初に出会ったのはいつか覚えてないが、確か、湘南国際村の研究会であったか、ポーの盗まれた手紙のラカン解釈の話しの時だったろうか。非常に印象的だった。その後、奈良の高等研で発表したら、河本さんが「あんたは狂ってる!言ってることはまちがってるが面白い」、とか騒ぐので、それで話すようになった。その後、現象学的還元という現象学の奥義を教えてもらい、荒川さんに引きあわせてくれたのも彼である。その引きあわせてくれた場所は、荒川さんが定宿としていたホテルのある半蔵門であった。また、東洋大学の哲学科で毎年1回だけ講義をしてきた。その縁で、彼のところの学生が研究室に出入りしていた時期もある。ムサビでのオートポイエシスの講義は、彼の後任という形であったし、それを考えると河本さんとは不思議な縁がある。
いま、MDFをはじめ、そうした身体性や哲学的な研究の流れに、このセミナーをきっかけに今一度たちもどって考えてみるのも面白い。
池上高志
開催日時 | 2013年11月30日(土) |
開 演 | 16:30(開場 16:00 / 終了予定 18:30) |
会 場 | 三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller 気配コーディネーティングの部屋 |
入場料/定員 | 3,500円(ドリンク・軽食込み)/ 30名 |
お申込方法 |
下記申込みフォームよりお申込みください。 お申込みが多数の場合、先着順とさせていただきます (お一人につき1回、2名様まで) |
主催
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岡瑞起/田代郁子 |
協力 | ABRF,Inc. |
河本英夫
1953年生まれ。東洋大学文学部哲学科教授。専攻はオートポイエーシス、システム論、科学論。荒川修作と親交が深く、荒川の著作の訳の多くを手掛け、日本の荒川の晩年の活動を本間桃世(ABRF)と共に支えた第一人物。著書に『自然の解釈学』『オートポイエーシス』『システムの思想』『メタモルフォーゼ』『システム現象学』『哲学、脳を揺さぶる』『臨床するオートポイエーシス』ほか。訳書=H・R・マトゥラーナ+F・J・ヴァレラ『オートポイエーシスー生命システムとはなにか』。単訳=荒川修作+マドリン・ギンズ『建築する身体』など。
池上高志 複雑系の科学者
1961年生まれ。大学で教授として教鞭を執る傍ら、複雑系科学研究者として、アートとサイエンスの領域を繋ぐ活動も精力的に行う。音楽家、渋谷慶一郎とのプロジェクト「第三項音楽」や、写真家、新津保建秀とのプロジェクト「MTM」、宮島達男とのプロジェクト、生命体のような動きをするガジェット「LIFE I-model」など、その活動は多岐にわたる。著書:『生命のサンドウィッチ理論』(講談社、2012)、『動きが生命をつくる―生命と意識への構成論的アプローチ』(青土社2007)、共著:『複雑系の進化的シナリオ』(朝倉書店、1998)『ゲーム―駆け引きの世界 (東京大学公開講座)』(東京大学出版会、1999)、共訳書:Andy Clark著『現れる存在』(NTT出版、2012)など。