荒川修作+マドリン・ギンズ著『建築する身体』(河本英夫訳、2004年春秋社刊)序文の中に、以下のような文章があります。
この本のタイトルをどうしようかとあれこれ考えつくしたあとに、
私たちは正しいタイトルにいたりついたのだろうか。
“After all this back-and-forth about the title for this book, have we ended up with the right one?”
「建築する身体とはなにか」。この問いについていくぶんか理解した読者だけが、
正しいタイトルに到達できるのだろうか。
“If only readers could come to it having some sense of what an architectural body is.”
このタイトルに代えて、なお別の決定的タイトルがあるとしたら、それはいったいなんなのか。
“What was our last other choice for a title?”
「生命の構築」こそ、それである。
“Constructing Life.”
だが私たちの作業は、一から十まで生命を構築するというより、生命を作り変え、再度かたちをあたえることにかかわっているのだから、本のタイトルとしては生命の構築を採用できないことになる。
“We couldn’t take it as the title because our work has more to do with recasting or reconfiguring life than with an out-and-out constructing it.”
生命の構築は、私たちの作業と、自己組織化、オートポイエーシス、人工生命、意識研究といった領域でおこなわれた作業とのつながりを示唆している。そのためにも生命の構築という語は望ましいものに思えた。
“We wanted it because it signaled the connection between what we do and work being done in the fields of self-organization, autopoiesis, artificial life, and consciousness studies.”
向かっている方向は、同じである。私たちは、これらの作業と同じ道を進んでいる。だがそうだとしても、私たちはまったく異なったことをおこないつづけている。
“The direction is the same. We’re on the same avenue. Even so, we’re doing something quite different.”
この違いをどう言い表したら、言い表したことになるのだろう。
“Should we spell out the differences?”
これを表現するために、機はいまだ熟していないのである。
“Not this time around.”
私(池上高志)は、上の序文の赤字の部分が気になっていましたが、生前の彼にはついぞ聞くことはできなかった。確かに、私は out-and-out constructing (artificial) life でやってきています。
そうした研究の流れの中に見えつつ消えてしまう泡沫のような「生命のかけら」について、いろいろな人と話しをしてみたい。また、話をする時期のような気がします。
そうしたことから、6回くらいを目処に、意識と生命をめぐる対談シリーズを企画します。
第1回目として茂木健一郎氏を招き、マッシブデータフロー(MDF)から考える意識科学、それとつながるアートや身体性の問題について語ります。
なぜ、いま話しをするべきなのか。それは、現代的な科学・アート・身体性への接続の仕方に触発され、これまでにはない「開かれ」を期待するようになったからです。これは、Party Art-Science Site(科学やアートをパーティーとして、パーティーを通じてともだちになる)です。科学とアートとお酒で酔いながら、頭の中にモヤモヤを作り出す企画です。
これをやるには天命反転住宅しかない。
みなさんの参加を期待します。
池上高志
開催日時 | 2013年10月27日(日) |
開 演 | 16:30(開場 16:00 / 終了予定 18:30) |
会 場 | 三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller 気配コーディネーティングの部屋 |
入場料/定員 | 4,500円(1ドリンク付き)/ 30名 |
お申込方法 | 下記申込みフォームよりお申込みください。 お申込みが多数の場合、先着順とさせていただきます (お一人につき1回、2名様まで) |
お申込締切 | 10月26日(土) |
主催 お問い合わせ先 |
岡瑞起/田代郁子 massivedataflow@gmail.com |
協力 | ABRF,Inc. |
茂木健一郎 脳科学者
脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、慶應義塾大学特別研究教授。東京大学理学部・法学部を卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程を修了。その後、理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。メディアでの活躍も広く知られている。近著に『挑戦する脳』(集英社新書)など
池上高志 東京大学教授
長野県生まれ。小中高と名古屋で過ごし、東京大学理学部物理学科卒業。同学大学院理学系研究科博士課程修了。現在は東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 広域システム科学系教授として教鞭を執る傍ら、複雑系科学研究者として、アートとサイエンスの領域を繋ぐ活動も精力的に行う。音楽家、渋谷慶一郎とのプロジェクト「第三項音楽」や、写真家、新津保建秀とのプロジェクト「MTM」など、その活動は多岐にわたる。著書:『生命のサンドウィッチ理論』(講談社、2012)、『動きが生命をつくる―生命と意識への構成論的アプローチ』(青土社2007)、共著:『複雑系の進化的シナリオ』(朝倉書店、1998)『ゲーム―駆け引きの世界 (東京大学公開講座)』(東京大学出版会、1999)、共訳書:Andy Clark著『現れる存在』(NTT出版、2012)など。