【現場インタビュー】株式会社安井建築設計事務所 吉冨聡さん

2005年5月18日  17:54
yoshitomi.jpg 第一回目のインタビューは株式会社安井建築設計事務所の企画部、吉冨聡さんです。吉冨さんは普段より企画部という立場から、クライアントのニーズをつかみ、それを設計スタッフに伝え、プロジェクトを完成させる仕事をされています。今回は荒川+ギンズとの出会いから三鷹天命反転住宅を推進するにあたってのいろいろなお話をお伺いました。 ABRF 荒川建築について色々とお聞きしたいと思います。本日はよろしくお願いします。 吉冨 どうぞよろしくお願いします。 ABRF 今回のプロジェクトの主である荒川修作との出会いからお聞かせ下さい。 吉冨 荒川さんとは名古屋市の志段味循環型モデル住宅の件で平成14年の秋にお会いしました。恥ずかしながらその時は荒川さんを存じ上げませんでした。その後、荒川さんが進めていた名古屋市志段味プロジェクトの打合せを拝見させていただき、その迫力ある話に、ただただ驚いていたという印象ですね。 ABRF 迫力ある話ですか(笑)。 吉冨 ええ(笑)。最初打ち合わせに同席した時、なぜか荒川さんがずーっと怒っていらっしゃって…。最初は僕も荒川さんのことをよく存じ上げていなかったので、「なんでこんなに怒ってるんだろう」と思っていたのですが、実際は怒っているのではなく、荒川さんが名古屋市の方々へ考えを伝えてようとしている時のとてつもなく真剣な姿なんですね。あれは本当に凄い迫力でした。 ABRF 初めて荒川修作の建築を見たときの印象についてはいかがでしたか。 吉冨 一言で言って衝撃的でしたね。 ABRF なるほど。どういうところが? 吉冨 荒川さんは、はじめから私たちが持っている建築の考え方や手法に疑問を持つところから考えられています。その観点が建築をしている者からすると驚きでした。私たちの考えている建築の常識を打破している、と感じるところもありますね。 ABRF 吉冨さんは、今回のプロジェクトでは全体のマネージャー的な役割だと思うのですが、その視点での自分の役割や位置づけはどう考えていますか。 吉冨 建築の中で常識とされている考え方を捨て、それを今まで私たちが培ってきた技術力と結び付けて、限りなく荒川さんの求めているものに近づけていく、ということが仕事ですかね。通訳としての役割が大きいです。軟骨のような役割でフニャフニャしながら、コンセプトと現場を繋げるという。クライアントが求めるものやコンセプトを実現させる、それが本来の建築の姿なのかなと思いました。 ABRF そういう中間的な立場の中では、苦労も多いと思いますが。 吉冨 荒川さんの住宅は完全な形ではまだ一度も出来ていないので、自分が荒川さんとのやり取りで間違って理解してしまうと、それが計画に反映されてしまいますので、そこは慎重にやりたいなと。やはり今まで誰も建てられなかったものですから、要求されたものをプロとして作っていくという。今回の僕のテーマはそれかもしれませんね。 ABRF 現段階で三鷹天命反転住宅の施工が進んでいますが、現在までの出来栄えというのは? 吉冨 コマーシャル抜きにしてもかなり面白いものになっていると思います。と同時に計画の中で今回は断念して頂いた部分なども含め不安も同時にあります。 yoshitomi3.jpg 【三鷹天命反転住宅打ち合わせ風景】 ABRF 三鷹天命反転住宅では球体や円筒形の部屋という今までにない形を取り入れています。最初にそれをご覧になった時の印象というのは? 吉冨 正直に言って、別に驚かなかったです。荒川さんとのお付き合いは志段味循環型モデル住宅の頃からご一緒していたので、最初から普通じゃないということは知っていましたから(笑)。ただ三鷹天命反転住宅のCGを初めて見たときは、いい意味で裏切られましたね。この想像力はどこから来るのかなと思いました。建築というより、最初のインパクトは絵としての凄さかもしれません。そういった意味で芸術の分野でご活動されてきたという側面もやはりあるのかなあと感じました。 ABRF まだ建設途中ですが、実際に球体や円筒形の部屋に入ってみていかがでしたか。 吉富 まあ設計をやっていたからというのもあるんですが、あの四角く抜かれた窓のおかげで、球体の部屋がこんなに圧迫しないものなんだなと感じました。最初はもっと極端に言うと、気が狂うんじゃないかなと思ったりもたんですが、意外と開放感があってこれはいけるなあと。そういう意味では非常に驚きました。また体験しながら、荒川さんが既に完成形をイメージ(体現)されているのだなとつくづく思いました。 ABRF そういう体験しないと分からないものを、事業として成立させていくことは本当に難しいですよね。 吉冨 そうですね。僕は最初の荒川さんとの仕事は、志段味循環型モデル住宅をどうしたら事業化できるかということろから始めましたから、住宅のクオリティーと平行してこのプロジェクトをどうやったら推進できるかというのは、僕にとっての非常に大きな課題だと思っています。
2005年4月13日 株式会社ABRFにて

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